英国の正式名称は、「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」です。連合王国は、歴史的な背景によるものですが、イングランド、ウェールズ、スコットランド、そして、北アイルランドという４つのカントリー／地域をグレートブリテン島とアイルランド島北部に展開しています。４つのカントリー／地域という呼び名は、日常的に使われていて、それぞれに独立した議会や代表者が存在しています。また、国際スポーツ競技に参加する場合にも、それぞれが独立しているという意識が強く、実際、イングランド、ウェールズ、スコットランドは、単独の統括団体を保持しているため、それぞれの代表がカントリー／地域を背負い、４つに分かれて競い合っています。日本にも馴染み深いのは、ラグビーのワールドカップです。ただ、北アイルランドだけは、単独でサッカーの統括団体を保持していますが、ほとんどのスポーツ競技において、アイルランド共和国とともにオールアイルランドを統括する団体を組織しています。もちろん、オリンピックの場合には、ひとつの主権国家から複数のチームが出場することは認められていないため、４つのカントリー／地域がまとまり、英国代表として選手団を結成しているわけです。

では、スコットランドの旅へ。激動の歴史と自然が育んだ独自の原風景のなか、見聞を広めていきしょう。気候は、メキシコ湾流の延長となる北大西洋海流と偏西風の影響が大きく、典型的な海洋性。つまり、緯度は高いのですが、思いのほか、穏やかな環境を体現できます。そんななか、シェイクスピアのマクベスの舞台であるコーダー城、あのネッシー伝説のネス湖、日本でも知られたゴルフの聖地セントアンドリュース、ハイランド地方の中心地インヴァネスなど、興味深いスポットが続きます。でも、再び注目されている、スコッチウイスキーの蒸溜所を見逃すわけにはいきません。優れたスコッチウイスキーづくりには、スコットランド特有の寒冷な気候と清冽な水源が大切な役目を果たし、泥炭／ピートによるスモーキーなフレーバーが決め手です。著名な蒸溜所の多いスコットランドの平均気温は、冬は2度から6度、夏でも14度から19度、と年間を通して寒冷で、ウイスキーの熟成に欠かせない、貯蔵するための条件を備えています。そのため、スコットランド各地には、モルトウイスキーを手掛ける蒸溜所だけでも130個所以上（2021年）、と言われています。これらの蒸溜所は、伝統や酒類生産ライセンスにより、ハイランド地区、スペイサイド地区、アイランズ地区、アイラ地区、キャンベルタウン地区、ローランド地区の６地区に分類されます。たとえば、ヘヴリディーズ諸島アイラ島で生産されるモルトウイスキーは、海藻などが混入したピートを使い、海辺で蒸溜しているため、潮やヨードの強烈な香りを堪能することができます。